東京・駒場東大前で、和食の店「七草」を営む前沢リカさん。新玉ねぎのすりながしやいちじくの白あえ、高野豆腐の揚げびたしなど、旬の野菜と乾物を主役に、ハーブやスパイスなどを組み合わせた滋味あふれる料理が評判です。小寒、啓蟄、立夏、大暑、白露、立冬と、年6回お店で開催している料理教室では、「七草」の料理そのものの作り方ではなく、「七草」の料理の根底をなす素材との付き合い方、食べ方などを家庭料理に生かせるような献立を提案。そこで前沢さんが愛用している調味料のひとつが、内堀醸造のお酢でした。
「料理教室では、生徒さんからどこの調味料を使っているかをよく聞かれます。なかでもお酢。なので、こうして前に並べてメモできるようにしています。内堀さんのお酢は、丁寧に造られているのでおいしいのはもちろん、あらゆるお店で買えるので、生徒さんにお勧めしやすい。お伝えしたレシピを自宅できちんと再現してもらえるので、とてもありがたい存在です」とデモンストレーション形式の料理教室を再現。臨醐山黒酢と美濃有機純りんご酢をスタンバイしてくれていました。
普段「七草」ではコース料理を出していますが、日本料理の根底にある五味ー甘味、辛味、酸味、苦み、鹹味(塩味)ーのバランスを考えながら献立を組み立てていくので、お酢を使った料理は欠かせないもの。
「食事の始まりに適度な酸味を取り入れることで食欲を目覚めさせたり、中盤で口の中をさっぱりさせたり。私自身、酸っぱい料理が好きで、修業していたお店でも、『いつも酸っぱいんだよ。すぐ酸っぱくなるから気をつけろ』と注意されていたくらい、お酢愛が強めです」
著書に『「七草」からご案内 いいことづくしの お酢レシピ』(成美堂出版)もあり、普段の仕事の積み重ねから生まれたプライベートお酢レシピはじつにさまざま。まずは、臨醐山黒酢をベースにした南蛮酢に、カラリと揚げたブリを漬け込んだ「ブリの南蛮漬け」を教えてくれました。
「臨醐山黒酢は、中国の香酢に近いまろやかさがあり、加熱するとコクと風味がいっそう際立ちます。他には代えのきかない唯一無二の味。じつは以前、夏に臨醐山黒酢を使った黒酢酢豚をお店で出していたんです。最近はお肉が苦手なお客さまが多いので、常連さんだけの裏メニューになり、今はお店のメイン料理はもっぱら魚。臨醐山黒酢に合わせるなら、今回ご紹介するブリのように脂がのった香りや個性の強い食材がおすすめです」
南蛮漬けというと、にんじんやピーマンが入ったカラフルな南蛮酢に漬け込むイメージがありますが、具は玉ねぎとしょうがだけといたってシンプル。
「玉ねぎから水分とうま味が出てくるので、水やだしを使わず、調味料だけで濃いめに作るほうがキリっと締まった南蛮漬けになります」
フレッシュな野菜をたっぷりのせてサラダ仕立てに。だからこそ、南蛮酢の具はあえて少なく。南蛮酢とブリの揚げ油がドレッシング代わりとなり、ブリ一切れで野菜がいくらでも食べられます。
臨醐山黒酢を使ったもう1品は「花椒黒酢卵」。
「味玉を、この黒酢で作ったらおいしいんじゃないかなと思いました」
花椒が爽やかに香る臨醐山黒酢ベースの汁に漬けた卵を切ると、黄身がとろ~り。黒光りした白身ととろける黄身の艶やかさに喉が鳴り、まったりとした黄身が舌にからみついて、ついついお酒が進みます。
「この絶妙な半熟加減が決め手。卵が固ゆでだと黒酢のコクとかみ合わず、味わいがバラバラになってしまうんです」
10個ほどまとめて作り、4~5日で食べきるのがおすすめだそう。
一方の美濃有機純りんご酢は、ぶどうや梨、柿やプラムといった果物の料理のときに積極的に使っているとか。
「意外に思われるかもしれませんが、古くから柿やいちじくなどの果物は、和食の素材として使われてきました。上手に使うと思いがけない味わいが生まれるので、ぜひご家庭でも取り入れていただきたくて、料理教室でも果物を使ったレシピはよく登場します」と教えてくれたのが、「柿とトレビスのサラダ」。
大きめにちぎったトレビスと半月に切った柿を美濃有機純りんご酢ベースのドレッシングで和えるだけ。
「国産の果汁を使った『純りんご酢』のほうが甘みとフレッシュな果汁感がありますが、『美濃有機純りんご酢』は香りが華やかで甘さは穏やか。味わいがすっきりしているので料理に使いやすいですね。果物とお酢が出会うと、目が覚めるような爽やかなサラダになります」
今回は、お酢を主役にした料理を3品教えてくれましたが、お酢を炒め物にひと回し、スープにひと垂らしするだけで、味をまろやかにして、奥行きのある風味を作り出す隠れた力も持っていると前沢さんは言います。
「濃縮還元のトマトジュースにお酢を少し入れると、さっぱりしておいしくなるんです。この間、トマトジュースとオーツミルクを3対2で割って、そこにお酢を少し入れるとめちゃくちゃおいしくなって、まるでガスパチョ。ぜひ試してみてください」
これも愛用しています!
「お店でバルサミコ酢を単品で使うことはないので、国産のバルサミコ酢だとしょうゆやみりんと合わせやすいので気に入っています。木樽のいい香りもちゃんとして本格的」と、お店では鴨肉のソテーに実山椒と合わせてソースにしたり、ビーツやトマトなど赤い野菜の料理に使っているとか。料理教室ではイタリア料理のときに使うことが多く、「使い切れるサイズ感も生徒さんにお勧めしやすく、ありがたく使わせていただいています」
「お店でバルサミコ酢を単品で使うことはないので、国産のバルサミコ酢だとしょうゆやみりんと合わせやすいので気に入っています。木樽のいい香りもちゃんとして本格的」と、お店では鴨肉のソテーに実山椒と合わせてソースにしたり、ビーツやトマトなど赤い野菜の料理に使っているとか。料理教室ではイタリア料理のときに使うことが多く、「使い切れるサイズ感も生徒さんにお勧めしやすく、ありがたく使わせていただいています」
茨城県生まれ。うなぎ店の3女に生まれ、幼少期から厨房で育つ。大学卒業後、ファッション企業に勤めた後、料理の世界に入る。野菜料理と江戸料理の店で経験を積み、2003年に東京・下北沢に「七草」をオープン。和食の基本を押さえつつ、洋のエッセンスも取り入れた料理に定評がある。2017年2月に現店舗に移転。料理教室、雑誌等へのレシピ提供も。
いなり寿司とちらし寿司を中心に、柿の葉寿司、朴葉寿司、冬の鍋など不定期のテイクアウトも人気。
詳細は
Instagram@inari_to_chirashi