味噌や塩こうじ、納豆やぬか漬けといった発酵食品をはじめ、豆板醤やコチュジャン、フルーツヴィネガーなどの発酵調味料も自家製。発酵研究で知られる料理家の真藤舞衣子さんにとって、発酵食品や発酵調味料探しはライフワーク。国内外を旅するときは、必ず酢をはじめとした発酵調味料を買って帰るとか。「きちんと原材料にこだわった市販品を見つけるのも楽しい」という真藤さんが長年愛用しているのが、美濃有機純米酢と臨醐山黒酢、美濃三年酢でした。
「わが家は祖母、母、私の三代女系家族で、みんな食べることが大好き。『食は三代』と言われますが、発酵食好きは祖母の代からの筋金入り。もの心ついたころから発酵食品に囲まれていました。味噌、納豆、ぬか漬けはもちろんのこと、健康オタクの祖母から紅茶キノコを飲まされたり、マコモ菌というマコモを発酵させた真っ黒い怪しいお風呂に入れられたり……。今でこそ発酵食ブームですが、私にとっては昔から生活の一部で自然なことでした」
発酵調味料も自家製にこだわる真藤さんが、市販品を選ぶときに大切にしているのは、どこの誰がどんなふうに作ったのかという食材の来歴だといいます。
「市販されているほとんどのお酢が、醸造アルコールを仕入れて速醸法で造られているのに対して、内堀醸造の美濃有機純米酢は、有機米を使い、多段仕込みという伝統的な酒造りの工程を経て醸造されたお酢。甘みのあるやわらかな風味で、どんな料理にも使いやすく、何にでも酢を入れてしまいます。家から一番近いスーパーに売っていて、なくなったらいつでも補充できるのがありがたいですね」と紹介してくれたメニューは「鶏むね肉と切り干し大根の酢和え」。
焼いた鶏むね肉を純米酢ベースのマリネ液と和えたもので、さっぱり味の切り干し大根が新鮮。
「切り干し大根というと甘辛味の煮物が定番ですが、私はむしろ酸味の味つけでしか使いません。酢の物やキムチにしたり、インド料理のアチャール風にしたり、発酵スパイスとお酢とはちみつで合わせたり。大根おろし感覚で食べられるので箸休めにおすすめです。コクのある感じにしたければ、純米酢を黒酢にして、しょうゆを加えるといいですよ」
同じ料理でも、黒酢でこっくりと、純米酢でさっぱりと。あくまで気分によって使い分けているといいますが、「カリカリ豚の黒酢香味和え」はどちらかといえば臨醐山黒酢がおすすめだそう。
豚バラ肉をカリッとするまでじっくり焼き、黒酢のたれをかけるだけ。五香粉とパクチーの香りがエキゾチックで、食欲をそそります。
「黒酢といえば、小学生の頃、家族で中華料理を食べに行き、フカヒレの姿煮が出てくると、大人たちが決まって『黒酢ちょうだい』と言って、黒酢をかけて食べているのがカッコいいなあと憧れていました。お店はもちろん中国の黒酢でしょうけれど、自宅でフカヒレの煮込みを取り寄せて食べるときは臨醐山黒酢で。臨醐山黒酢は、そのままでも飲みやすい、やわらかな酸味。酢豚などの中華レシピにも使ったりしますね」
そして、祖母が作ってくれたちらし寿司が大好きで、祖母から栗の木をくり抜いたすし桶を受け継ぎ、よくちらし寿司を作るという真藤さん。伝統的な和食材のちらし寿司から、和洋折衷の簡単なものまで、さまざまなレシピを考案していますが、酢飯作りに欠かせないのが美濃三年酢だそう。
「3年以上熟成された酒粕を使用した赤酢は、コクと風味があって、酸味がツンとせず甘みがあります。これで酢飯を作ると色も濃くなり、江戸前のお寿司屋さんの酢飯みたいになるんです。ぜひ手巻き寿司を、美濃三年酢の酢飯で作ってみてください。もう普通のお酢には戻れなくなります」
東京都生まれ。会社勤務を経て、京都の大徳寺塔頭で1年間の修業生活を経験。フランスに留学してディプロマを取得。現在は、おもに発酵をテーマにレシピを提案。近著に『ドライきのこの美味レシピ 人気のトリュフやポルチーニなど!』(世界文化社)、『つくりおき発酵野菜のアレンジごはん:からだ整う腸活レシピ』(主婦と生活社)。